ポーカーの成績を革命的に向上させた3大概念「Stack to Pot Ratio (SPR)」

コンビナトリクス、フォールドエクイティと並んで私のポーカーの成績を革命的に向上させたSPRという概念について解説したいと思います。

SPRという概念は、自分の持っているチップの量、すなわちスタックサイズがどれくらい適切なアクションを行う上で重要かということを示す格好の例となります。

この投稿を観ると、コンビナトリクス、フォールドエクイティと併せて、運がよいときは勝てるけど運がよくないとどうも勝てない、トーナメントで気が付けば自然死してしまうという悩みを抱えている方、壁にぶつかっている方がその壁を越えていくきっかけとなる、

ポーカーで継続的に勝っていくために習得することが不可欠な概念を習得できると思います。

是非最後までご覧ください。

Stack to Pot Ratio(SPR)とは

Stack to Ratio(SPR)とは、スタックとポットの比率のことです。

全員が100bb持ちで、ポットが6bbだった場合、SPRは100/6=16.7です。50bb持ちでポットが6bbだった場合は、50/6=8.3です。

SPRがなぜ重要かというと、その数字を見ることで、主に2点のことが分かるからです。一つ目は、プレイのしやすさ、プレイアビリティです。二つ目は、ポットコミットして自分や相手が苦しくなる時点を先に読むことができる、すなわち、コミットプランを立てることができるという点です。

スタックが変わるトーナメントで特に重要になります。キャッシュゲームでも有用な概念です。SPRによって同じフロップでも解釈が変わることになります。

以下説明します。

エフェクティブスタックとコミット

まず前提として説明しておかないと知識が2つあります。

エフェクティブスタックとコミットです。

1つ目はエフェクティブスタックという概念です。

エフェクティブスタックとは、プレイに関係する有効なスタック量のことです。

例えば、全員が同じ100bb持ちのスタックであれば関係ない概念ですが、100bb、40bb、25bb、10bbなどと、トーナメントなどでは、各プレイヤーのスタック量が異なることはよくあることですよね。

例えば、100bbのプレイヤーと40bbのプレイヤーがヘッズアップになっている場合、100bbのプレイヤーはオールインしても40bbしか減りませんし、相手のチップをすべて奪ったとしても40bbしか増えません。よって、この100bbのプレイヤーの40bbを超える部分60bb分は全く意味がなく、40bbだけが有効なスタックとなります。このようにプレイヤーのなかで最もスタックの少ないプレイヤーのスタック量だけが有効になることがエフェクティブスタックの概念で、SPRの場合にも、エフェクティブスタックをポットで割ることで計算ができます。100bbのプレイヤーと40bbのプレイヤーがヘッズアップになっていて、ポットが6bbだった場合、SPRは40/6=6.7になります。

次にコミットという概念ですが、自分のスタックと比してポットが大きくなりすぎることで、ベットに必ずコールしなければならないなど、自分のアクションが制約されてしまう状態のことです。

例えば、余りあり得ない例ですが、72oという最悪なハンドを持っていても、相手がAAを持っていると確信していても、ポットが100bbあって、自分のスタックが1bbしかない場合は、オールイン要求にコールしないと不合理ですよね?

よくある状況としては、100bb持ちでプリフロップで66を持っているときに、70bbのブラフ5ベットをしたところ、相手が100bbの6ベットオールインをしてきた場合、200bbのポットを取るのにあと30bbだけの投資でよいので、どんなに弱いハンドを持っていても30/200=15%の勝率もないことはないので、嫌々ながらコミットしているのでコールしなければならないというものです。

例えば、第1回のしまぽのポーカーチャンネルフリーロールでこういうプレイがありました。

コミットしているので、このようなハンドでもコールせざるを得なくなります。

このようにコミットしている状況でコールしない場合には大きく期待値を損なうことになるので、正しくコールしなければならないのですが、そのような状況に追い込まれないようにする、また、相手にはそのような状況に追い込めると有利になります。

プレイアビリティ

ここからSPRが重要な理由の説明をします。

まず、プレイのしやすさの指標となる、プレイアビリティを測ることができる点について説明します。

ボタンでAAを持っていてレイズをしてBBにコールされた例を考えてみます。

100bb持ちの場合、3bbのレイズをしてBBがコール。

フロップはT98r。SPRは97/6.5=14.9です。

BBチェックでCB4bbを打ったところ、xr12bbされました。

嫌々ながらコールします。

ターンTで20bbベットされました。バックスタックは65bbです。

負けているコンボが増えたこともありフォールドします。

これが30bb持ちだとどうなるでしょう。

SPRは27/6.5=4.15になります。

CB4bbを打って、xr12bbされた場合、

バックスタックは23bbなので、特に悩むこともなくオールインをしてJTなどにフォールドエクイティを取られなくなります。もちろんT9やQJに突っ込んで負けてしまう可能性もありますが、T9についてはツーペアやセットを引いて逆転することも当然あり、

エクイティを無駄にすることにはなりません。

ではこれが200bb持ちだとどうでしょうか?

SPRは197/6.5=30.3です。

Xr12bbされたとしてもまだバックスタックは185bbありますので、

コールをしてターン以降のアクションを見ることもできますし、

あまり考えにくいですが、諦めてフォールドしても痛手にはなりません。

ただ、相手がフロップストレートを持っていた場合には、大打撃を食らうことになります。

このように、SPR、エフェクティブスタックに対するポットの比率が変わることで、ハンドのプレイアビリティが変わります。

具体的には、SPRが低ければ低いほど、コミットに至るまでのアクションが少なくなるため、ハイぺアやセット、ツーペアなどの完成してしまっているハンド、すなわち、メイドハンドの価値が高くなり、SPRが高くなればなるほど、ドローなど完成したときに大きな利益を実現できるような種類のハンドの価値が高くなり、ペアなど既に完成しているハンドのリスクが増すことになります。

これだけ聞くと( ´_ゝ`)フーンて感じかもしれませんが、SPRは操作できる点に注目する必要があります。

100bb持ちで3bbオープンで、BBにコールされた場合SPRは97/6.5=14.9ですが、

これが2.5bbオープンだと、97.5/5.5=17.7になり、2bbオープンだと、98/4.5=21.7で非常に高いSPRとなり、よりドロー系のハンドに有利になったり、レイズされたときでもAAで難しい判断を迫られなくなるなど、自分がプレイしやすいSPRに操作することができます。

30bb持ちで4bbのレイズをした場合には、SPRは26/8.5=3.06となり、よりコミットしやすくなるため、オーバーペア、オーバーカードの価値が増すこととなります。

なお、念のために申し上げておきますと、ここではオーバーペアを持っているときにはレイズ額を大きくすべきと言っているわけではありません。ここでは、あくまでもオープンレイズ額を変えることでSPRを操作できることができる一例を示しているだけです。

コミットプラン

SPRの操作が最も有効に機能するのは、プリフロップ、フロップ、ターン、リバーのどの時点で自分がコミットすることになるのかを事前に決めておくこと、すなわち「コミットプラン」を立てるときです。

プリフロップで3bbのオープンレイズをする場合と、2.25bbのレイズをする場合で、ハーフポットのベットをフロップ、ターン、リバーでする場合にどれくらいベット額が変わるか知っていますか?

3bbのレイズにBBがコール、プリフロップのポットは6.5bb

フロップでハーフポット3.25bbのCBを打った場合は、13bbのポット、

ターンでもハーフポットを打つと、6.5bbのベットで、ポットは26bbに、

リバーでは、13bbのハーフポットベットを打つことになります。

トータルのベット額は、3+3.25+6.5+13=25.75bbになります。

一方で2.25bbのオープンレイズの場合は、計算は省略しますが、

2.25+2.5+5+10=19.75bbになって、6bbもベット額に差が出ることになります。

これが70%ポットベットの場合には、3bbのオープンレイズだとベット総額は44.68bb、2.25bbのレイズだと34.31bbで、こちらは10bbの差になります。

ポットの大きさの差は、そのままSPRの差につながります。その結果、オールインとなる時点、そこから逆算されるコミットする時点が変わることになります。

例えば、先ほどの例で言うと、2.25bbのオープンレイズからハーフポットでリバーまで来た場合には、リバーまでのベット総額は先ほど申し上げた通り19.75bbで、40bbを持っている場合には、リバーでBBから3倍の30bbのチェックレイズをされたときにちょうどオールインすることとなります。

この場合は、80bbのポットに20bbのスタックでコールすることになるので、25%以下のエクイティがあれば十分となります。ボードの内容にもよりますが、かなりのハンドでコールせざるを得ないいわゆるコミットしている状態になります。

一方で3bbのレイズの場合には、ターンまでのベットは12.75bbでバックスタックは27.25bb、リバーでハーフベットを打つとしたら13bbとなり残りは14.25bbなので、どのようなレイズにもコミットしてしまうこととなるため、難しい判断を避けるためにはオールインすることが妥当となります。また、この場合は、ターンで3倍のチェックレイズをされた場合には、27.25bbのバックスタックで19.5bbのレイズに直面することとなり、ほぼコミットしてしまうので、リバーでのベットではなくターンでのハーフポットベットに注意すべきとなります。更にチェックレイズ側も、ボタン側がオールインしてきた場合に、7.75bbのレイズにコールできないようなハンドでブラフをしないように気を付けなければなりません。このような場合に降りてしまうのは最も致命的なミスであり、また中途半端なハンドでコミットした結果コールせざるを得なくなってしまうことも避けなくてはいけない事態です。このような場合にはチェックコールにとどめるなどしておかねばなりません。

このように、スタックとポットの関係、SPRをよく見ておかないといけない最も大きな理由は、意にそわないコミットをしてしまわないようにベット額を調整したりアクションを変えること、その裏表として、相手を意にそわないコミットに追い込むようにベット額を調整したりすることにあります。

コミットを巡る攻防

コミットの概念を逆手にとって、実際はコミットしていないのに相手からはコミットしているように見えることを利用して、ビッグブラフをすることができます。

例えば、一般的には、プリフロップの時点で、スタックの3分の1以上のベットをしてしまった場合、もうコミットしているとして、オールインをしても降りることはないと考えられています。

これは、プリフロップで33%よりエクイティが低い想定レンジはまずないためです。

KQccvAKhhでドミネイトされているときも27.8%のエクイティがありますし、25%を下回るのは、相手がオーバーペアのときくらいです。

完全に和製英語の造語ですが、このコミットしているように見えて最後に打てるブラフのことをラストブラフと名付けています。英語だと恐らくFinal Shotみたいな感じになりそうです。

コミットプランは、最後に打てるビッグブラフの主導権を自分の側に持ってくる際に最も使える概念です。

具体的にプリフロップのレイズ合戦を例に考えてみましょう。

オープンレイズに3ベットは3倍、4ベット以上は2.3倍で返すとしましょう。

まずオープンレイズを2.5bb打ったとします。3ベットは3倍の7.5bb、4ベットは2.3倍の17.25bb、5ベットは39.68bbとなります。

すると、この例だと、

・エフェクティブスタックが7.5bb以下だとオープンレイズでほぼコミット、

・7.5~22.5bbは3ベットでコミット、

・22.5~51.75bbだと4ベットでコミット、

・51.75~119.025だと5ベットでコミット

となります

よって、

・7.5~22.5bbのときは、3ベットでコミットしていることを装ったブラフでオープンレイズを攻撃

・22.5~51.75bbだと4ベットでコミットしていることを装ったブラフで3ベットを攻撃

・51.75~119.025だと5ベットでコミットしていることを装ったブラフで4ベットを攻撃

することができます。

例えばエフェクティブスタックが20bbでBTNから2.5bbのレイズがあった場合、SBからA6sで7.5bbの3ベットをした場合、BTNから見ると、20bbのスタックから7.5bbも出しているので、コミットしているように見えて、軽々に4ベットオールイン要求はできなくなりますが、たまたまKKなどを持っていて4ベットオールインしてされた場合にもこちらは負けていると分かっているので、降りることができます。

このようにエフェクティブスタックに注目してコミットしているように見せかけたブラフを行うことで不利な状況にある相手を効果的に攻撃することが可能になります。3ベット側が有利なのか、それとも2ベット、4ベット側が有利なのか、常に留意しておかなければなりません。

次にBTN側のプレイヤーが自分だとして、20bbでSBから7.5bbの3ベットブラフをされたら降りざるを得ない状況にある場合、どのような対応策があるでしょうか。まずレイズ額を増やして3ベットが容易に打てなくすることが考えられます。4bbのオープンレイズにした場合、3ベットを打つと本当にコミットしてしまうため、SBやBBも容易に3ベットブラフはできなくなります。

また、レイズ額を2bbに減らすことで、3ベット額も減らし4ベットやコールができる状況にすることも考えられます。これはオープンレイズをするときより、3ベット以上をするときの方が効果的に行えます。また、最も簡単なのは、自分が容易に3ベットで攻撃される状況だということを認識して、オープンレイズのレンジを狭く強くして頻度を下げ4ベットバリューが頻繁に行えるようにすることです。このような考え方は、3ベット以上でカウンターを行うときにも適用できます。

まとめ

以上SPRとそれを使ったブラフについて、解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

コミットを利用したブラフも、相手のエクイティを奪う、フォールドエクイティを確保することがポーカーで勝つ上で不可欠だという本質を突いた戦略なので、これをうまく活用することで、成績が大きく向上すると思います。

コンビナトリクス、フォールドエクイティ、SPRの3つは、私のポーカーの成績を革命的に向上させた概念です。この3つは非常に有効だと思うので何度も見てぜひ習得してください。

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