ポーカーの勉強方法

はじめに

この記事では、アマチュアポーカープレイヤーがポーカーを勉強したらよいかについて説明します。

対象者は、ポーカーを始めて1か月から半年くらいの人で、ルールは覚えてポーカーの面白さは分かったけどイマイチ勝ちきれないのでどうやって勉強すればもっとポーカーが上手くなるか、という問題意識を持っている主に初心者の方です。

この記事を読んでポーカーを勉強することで、

・3か月から半年くらいで国内のアミューズカジノのトーナメントでブイブイ言える

・海外のトーナメントでもインマネ(入賞)や優勝が夢じゃない

といったレベルになれると思います。


自己紹介

私は単なるアマチュアポーカープレイヤーです。
ポーカー歴は16年目。真面目にやって10年くらいになります。

ポーカーの情報が、ネットも含め何もないところから始めました。
普通に会社員でしたので、勉強するにも時間に制約がありました。
どうやって効率的に勉強したらよいか、かなり詳しく調べました。

自分で勉強した内容をブログで紹介していたら、ありがたくも出版社からお声がけがあり、2011年には本も出版もさせてもらいました。

この記事では、自分の経験を踏まえ、初心者がどうポーカーを勉強したらよいのか、
手がかりとなるような方法をシェア
したいと思います。

この記事は、ポーカーに関する知識をまとめたり、ハンドを解説したりするものではありません。あくまでも勉強の「仕方」を共有するものです。

魚を渡すのでもなければ、魚の釣り方を教えるのでもなく、魚の釣り方の勉強の仕方について説明したいと思っています。

プロになるつもりはないけど、ポーカーを趣味として楽しみたい、でも、あわよくば、海外トーナメントで優勝してマンションの頭金を稼ぎたい旅行中にキャッシュゲームをしてホテル代や航空券代くらいは稼ぎたい、そんな風に思いませんか?

このようなことは十分実現可能な夢です。
私も、旅行中にちょろっと参加した250ドルの参加費のトーナメントで、運良く1295人中6位になって、36倍の賞金9000ドルを手にしたり、1700ドルの参加費のトーナメントで5位になって16倍の26000ドルの賞金を得たりしました。
20連敗したこともありましたが、大体4回に1回以上は入賞できます。
トーナメントが趣味なのでキャッシュゲームにはあまり参加しませんが、それでも1回の旅行単位で最低レートで負け越すことはまずありません
こんなに割のいい楽しい趣味はありません。

いくら勝っているなどということは言いませんが、旅行代を遥かに上回る利益をあげることは、アマチュアにとっても全く難しくありません

我々のようなアミューズメントポーカープレイヤーは、プロと違って、時間と掛けられる労力に制約があります。
一生大好きなポーカーばっかりやって暮らしていく生活に憧れることもあるでしょう。

しかし、我々にはプロにない素晴らしい利点がいくつもあります。

まず、我々には無限のバンクロールがあります。本業で稼いだ余裕資金をいくらポーカーに投入しても、全く問題ありません。

次に、生活費を稼がないといけないというプレッシャーが全くありません
ポーカーで勝つだけでなく、ホテル代・食費・交通費といった滞在費を帳消しにしつつ、年金、医療費、税金分を控除して、それを上回る利益を上げないといけないというプレッシャーのもと、楽しくポーカー続けていく自信はありますか?
私にはありません。

旅行代を上回る賞金を勝てると言っても年収換算したら、フリーターの年収の半分もいきません。趣味として年間100万円勝てたら嬉しいと思いますが、年収100万円だと・・・ですよね?
ポーカーで年収1000万をコンスタントに確保するのは、普通に働くより何倍も何倍も大変だと思います。

プロのみなさんはこのようなプレッシャーのなかで戦っています。
我々は、永遠にポーカーを楽しむことができる恵まれた立場にいるのです。

楽しみながらあわよくば勝ちたいという、このような立場を強化すべく、
「ポーカーを勉強するにはどうしたらよいか」をテーマに、上記の構成で、
これからポーカーを一生の趣味として楽しみたい人向けの勉強方法を紹介します。

総論

ポーカーの勉強も、基本的には、受験勉強や仕事の勉強と同じだと思います。
なぜかポーカーになると途端にできなくなる人が多い印象があります。

その最大の障壁は、特に勉強しなくても結果が出てしまうことにあります。
実際私も最初の数年はそうでした。
今思うとトンデモナイ知識の無さでWSOPにフラ~と出ていました。
いいことでもあり悪いことでもあります。

センスがあるから結果が出る人もいるし、運が大きく絡むゲームなので、単についているだけのこともあります。

ただ、自分の経験からしても、ちゃんと勉強してからの方が圧倒的に成果が出ています
私の場合、本を書くために一度みっちり基礎的な勉強をしたのですが、本を出版したのが2011年の5月で、23回のインマネのうち実に21回が、本を書いた後になってます。

ルールを覚え、正しい型を学び、現実に型を当てはめ、型を壊し新しい型を創る
茶道や武道で言われる「守破離」がポーカーにも当てはまると確信しています。

基本的な正しい型を勉強するときに心がけた方がよい点が3点あります。

まず「知っているということ」と「実際にできること」は別だということです。

ポーカーには、スポーツほど身体能力は影響しませんが、問題が複雑で考慮しなければならない要素が山ほどあるので、体力・集中力の低下や、興奮状態・精神状態にアウトプットが左右され、知っているからと言って必ずできるということにはなりません。
知っているということとできるということは別だということを認識して、そんなこと知っているで終わるのではなく、「知っていること」を「できること」にするステップ、トレーニングが必要になります。

ただし、そもそも知らないことはできないことが多いので、まず知ることは何よりも重要です。

情報は無限、リソースは有限

 10年前にはほとんど情報がありませんでした。とりあえず本が出れば読み、ブログ記事が出れば読んでいればよかった時代でした。

 今は英語であれば、教材はほぼ無限にあります。日本語でも相当な量が存在しています。

 また、大量の動画コンテンツがあります。動画は、見始めてからやっぱこれダメだというのに気づくのに時間がかかるので初心者には効率的な教材ではありません。さらに、文章と違って高い情報処理能力も活かせません。効率的に有限な希少資源・時間を活用するには、情報の精査が必要になります。

情報の精査の基準ですが、陳腐化しない情報、していない情報を取得する必要があります。

 特に本に顕著ですが、出版されたときは最新の情報だったのがときが経てば陳腐化して使えない情報が多くなります。

例えば、自分の本も、この前ディーラーの子が買ったと言うのでざっと見返したら、本編175頁中29頁、17%が古かったり今となっては意味のない情報でした。
そうは言っても未だに有用な本だと思います。
おかげさまで5000部まで増刷されています。

ABCポーカー

ポーカーに関する情報が正しいのか間違っているのか、自分がある程度のレベルにないと判断できません

ポーカー談義も「人による」とか「どっちも正解」などの結論に至ることが多くなります。

それでも殆どの人の解答が一致することもありますし、何より歴史的な評価、掲示板での炎上などを経て残っている理論も多いです。

そのような陳腐化しない正しい情報こそが「基礎」であり、学習はそこから始めなければなりません。これがいわゆる「ABCポーカー」と呼ばれるものです。         

ABCポーカーというと初心者向けの単純なポーカーだと思うかもしれませんが、決してそうではありません。

教科書プレイとも呼ばれ、基本に忠実に読まれ易いプレイともされますが、全く問題ありません。

日本ポーカー界の神、木原直哉も次のように言っています。

『オッズの数学的な概念を根拠として、全く何も知らない人に一から全て(ある頻度でのCBやブラフ、バリューベット、タフコール含む)教えるような教科書を書けるレベル』です。
だいたいABCプレーをマスターしていれば、
ライブしかやらないプロには余裕で勝ち越せるスタイルのつもりでいます。

このようなABCポーカーこそ、我々のようなアミューズメントプレイヤーが身につけなければならない基礎です。

学習レベル



学習をするには、自分がどのレベルにいるか知ることが重要です。いきなり延々と過去問を解いても大学受験は成功しません。
教科書→参考書→問題集といった形で適切にステップアップし、身の丈に合った情報を習得しなければなりません
ステップごとにABCポーカーを学ぶのに適切な教材を選ぶ必要があります。

ここにあげた学習レベルは極めて便宜的なものですが、自分がどの程度のレベルにいるのか参考になると思います。

なんとなくの感覚だと、レベル3と4にできる人とできない人の大きな差があって、3までと4-6の一部がABCポーカーと呼ばれる基礎かなと思います。
このレベルまでは能力ではなくスキルなので、誰でも到達できると思います。

まずは、プリフロップの勉強をすることが第一です。

プリフロップはプレイ頻度が多いですし、また、プリフロップがちゃんとプレイできていれば、ポストフロップもプレイしやすくなるからです。

その基礎中の基礎がスターティングハンドの絞り方です。

 シチュエーションを的確に判断し、適切なハンドで参加し、適切にプレイするだけで、おそらくアマチュアプレイヤーが勉強しなくちゃいけない内容の50%~85%くらいではないでしょうか。(この先の15%が極めて困難ですが・・・)

スターティングハンドについては、色々ネットでも上がってますが、スターティングハンド表自体は、既に洗練化しており、初学者にとっては、どれもそれほど変わりはないので、まずはどれかをやり込むのがよいです。

 その手がかりとして、ひゃっほう掲示板ccさん作成のリンク集が非常に参考になります。正しく神サイトです。

 自分は、この中では、ダン・ハリントンのスターティングハンド表で勉強をし始めました。あと、いぺこさんのハンド表も熟読しました。

最近は、Doug Polkのハンド表も見ましたが、特に違いは内容に思います。

あとは、後述のPokerSnowieのPreflop Advisorで時折チェックするくらいです。

まずは、どれでもよいのでスターティングハンド表を完璧に覚え実践するところから勉強を始めましょう

勉強をするのは、がむしゃらにプレイを続けるのもよいですが、自分の学習レベルに応じた良い教材を使った方が効率的です。皆さん、WordやExcelは普通に使えると思いますが、巷には「Word使い方教室」など山ほどあり、入門書もかなりの数があります。どういう人が読んでるんだろうと思うかもしれませんが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングもよいですが、普通に勉強するのが効率的だということなのです。 

一方でこのようにExcelでハートマークを関数で書けるのですが、これを自力で習得できる人はどれくらいいますか?ネットで検索したり人から教えてもらったら一瞬で書けるようになりますが、自分で書く方法を見つけ出すのは極めて困難です。

ポーカー界では、Excelを渡して「はい関数でハートマーク書いて、これくらいできるでしょ」みたいな教材も結構多いので要注意です。

ABCポーカーの最適な教材として次のものをおすすめします。

www.pokerdou.com

まずは、ポーカー道。ご存じの方も多いと思いますが、ポーカーの基礎知識が網羅的にまとめられている神サイトです。まずこれを全部読むのがよいでしょう。

www.tradersshop.com

www.tradersshop.com

次に、我がトーナメントポーカー入門アグレッシブポーカー

陳腐化した部分もありますが、まだまだトーナメントポーカーの基礎的なレベルで抑えておくべき情報が網羅されている本だと自負しています。あまり褒めてくれる人はいませんが、もう4刷増刷されているので、お役に立てているんじゃないかと思います。

 最後にデジタルポーカー。原著は2011年の本で日本語版は4年前の2013年の出版にはなりますが、基礎的な本では一番新しい本です。後述のポーカー統計ソフトについても説明。

 おそらく基礎的なポーカーの本、情報商材レベルではない名著となり得るものは、この先出ないでしょう。後述のPokerSnowieとPioSolverの使い方を分かりやすく説明した本が仮に出たとすれば、それが最後になるのではないかと思います。                     

バランスとエクスプロイト

 最後に、勉強するうえで心がけてほしい、バランスとエクスプロイトという考え方を紹介します。

ポーカーのアドバイスでは、「ベットし過ぎ」、「コールし過ぎ」、「フォールドし過ぎ」というものをよく聞くと思いますし、これから聞くことになるでしょう。
コールすべき、ベットすべきなど選択肢が一義的に決まるアドバイスより、「過剰でないこと」を求めるアドバイスが多くなります。

これはポーカーには、何より「バランス」が必要で、バランスを欠いたプレイをしていると、そこが弱点とみなされ、その弱点をついて利益をあげる、すなわち、「エクスプロイト」されることとなるためです。名立たるポーカープロを破ったカーネギーメロン大学のポーカーAIの名前もラテン語で「バランスの取れた」という意味の「Libratus」でした。

 では、何を基準にバランスが取れているか、○○し過ぎでないかを決めるのかでしょうか。これには、ビッグデータ解析AIを活用したトレーニング、計算ツール(ソルバー)を使った分析が極めて有用となります。

Hold’em Manager/Poker Tracker 

Hold’em Manager/Poker Trackerは、オンラインポーカーで、参加ハンドの統計情報を集積するプログラムです。

自分のデータと同卓した相手のデータを集計し、リアルタイムで掲示してプレイの参考にできるだけでなく、別途、自分のデータを分析して、プレイの見直しなどもできます。

極めて奥が深く、また、相当のハンド数が蓄積しないと信頼性に疑問が出るデータもあります。現時点ではこのような多様な「要素」を考慮してプレイの調整をするのかということを、ライブトーナメントをプレイする上でも知っておくだけでよいと思います。

統計ソフトで計測できる主な情報のほんの一部分を紹介します。本当にこれ以上無限にも近い指標があります。

VPIPとPFR(プリフロップレイズ)は基本中の基本です。ブラインド以外の参加率を表すのがVPIP、プリフロップでレイズで参加する率がPFRです。この2つの指標で相手の持っているハンドの幅、いわゆるハンドレンジが推計できます。また、自分が決めたスターティングハンドどおりにプレイできているかの復習にも使えます。

Agg・アグレッションファクターは、ベットとレイズの回数をコールの回数で割ったもので、どれくらいアグレッシブなプレイをするプレイヤーかが分かる指標です。大体コールの3倍程度の頻度が適正とされていて、1以下の場合はコールが多過ぎる・ブラフしなさすぎ、4以上はブラフしすぎなどが分かります。

この他3ベット率など色々な指標を使って相手のプレイヤーのタイプを見極めたり、自分のプレイの復習に使えます。 

もっと詳細を知りたい場合は、私の有料noteと木原さんの有料noteをご参照ください。

note.com

note.com

PokerSnowie

ポーカースノーウィは、人工知能を活用したポーカートレーニングツールで、ポーカー界に降臨した「神」のごとき存在です。

事前にインプットされたプログラムに基づいて単純計算をするのではなく、Googleのアルファ碁ゼロと同じく「教師なし・深層強化学習」によってアルゴリズムを構築したポーカーAI

何ら戦略を事前にインプットすることなく、自ら何兆ハンドもプレイすることで、バランスが取れて相手に弱点を突かれず、読まれにくく、期待値が最大化できるアクションラインを構築しています。
このソフトがすごいのは、ブラフ、チェックレイズ、スロープレイ、セミブラフ、ポジションの力、ドンクベット、ブロッカーといった、今日、基礎的な知識として共有されている戦略を、自ら編み出しているところにあります。

PokerSnowieの最も重要なトレーニング機能は、ポーカースノーウィとプレイすることができることです。「スノーウィトレーニング」というPokerSnowieとの対戦によって、相手にエクスプロイトされないバランスの取れた標準的なベースとなるプレイの仕方が身に付きます。

実際に動画を見てみましょう。

www.youtube.com

ポーカースノーウィとのトレーニングで、バランスの取れた相手とプレイする場合の標準的なアクションを身に付けてから、そこから離れたプレイヤーからの利益の上げ方(エクスプロイトの仕方)を実戦で追求していくことになります。

具体的には、ここにあげているように

  • オープンレンジが広過ぎ3ベットにはフォールドし過ぎるプレイヤーには、3ベットレンジを広げる。
  • コールレンジが広すぎるプレイヤーには、ブラフを減らしてバリューハンドで大きくベットする。
  • CBを打つ頻度が高過ぎるプレイヤーには、モンスターハンドでコールしたり、チェックレイズブラフを増やす。

などの調整が一般的です。

前段の条件となるオープンレンジが広「過ぎる」、コールし「過ぎる」、タイト「過ぎる」といった過剰かどうかの基準となるプレイを把握するのに、PokerSnowieは最適といえます。

最後に木原さんのTweetを引用します。

PokerSnowieの導入方法は次の記事を参照してください。

PioSolver

最後に、GTO計算機PioSolverを紹介します。

ヘッズアップの状況下で、特定の「ハンドレンジ」「ベットの選択肢」を持つ相手に対して、どのようなアクションラインを取ることが最適か期待値とともに計算するソフトウェアです。

初心者でトレーニングに用いることは高価かつ極めて困難なので、こういうものもあるのかと認知しておくだけでよいです。

実際に動画を見てPioSolverでどのように解析するか見てみましょう。

まずは検討するプレイの動画です。

youtu.be

この動画で気になったのは、SBからQ9ddでプリフロ3ベットできるのか、また、4ベットされてコールできるのかAハイフロップCBを打たれてチェックコールできるのか、あとQQ側はリバーコールできるのかという点です。

相手が適切にプレイするプレイヤーの場合、どうするのが適当なのかはPokerSnowieでも分かるのですが、今回はヘッズアップでもありますし、またどういう風にレンジのバランスが悪い相手ならコールできる・レイズできるかを調べたい場合には、PioSolverを使うしかないので、どうやって検証するか実際に見てみましょう。

youtu.be

参考までに、PokerSnowieとPioSolver、あとトーナメントポーカー入門にも載っているパワーナンバーのメリット・デメリットの比較表を資料として紹介しておきます。

私は、ざっと言うと、

・40bb以上のスタックのプレイや多人数プレイなど基本的なプレイはPokerSnowieで勉強し、

・20bb-40bbで気になった状況は、PioSolverで計算、3人以上参加する状況はPokerSnowie

・20bb以下はパワーナンバーの復習で対応しています。

以上、ポーカーを一生の趣味として楽しみたい人向けの勉強方法でした。

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