これまでのポーカー人生のなかで最も有用だった概念「コンビナトリクス」

私のこれまでのポーカー人生のなかで、

最も有用だった概念のひとつであるコンビナトリクスについて解説します。

私がコンビナトリクスを始めて知ったのは、後にRun it Onceのコーチにもなるクラッチヒーローさんの有料動画でしたが、この概念を知って自分のポーカーの成績が大きく向上したのを覚えています。

コンビナトリクスとは、ハンドレンジの中のバリューとブラフの組み合わせの数、いわゆるコンボの数を数えてベットやコール、フォールドなどのアクションを決めることです。

前回ご紹介した通り、バリューベットは、ハンドの価値を実現するために行われるベットです。そのバリューベットを打つ際に、相手のレンジにどのくらいの組合せ、コンボがターゲットとしてあるかを考えて、

・ベットするかしないか、

・ベットするとしたらどれくらいの額がよいか

を決めます。

同じように、ブラフについても、相手のレンジにどのくらいのコンボがブラフのターゲットとしてあるかを考え、ブラフするかしないか、ブラフするとしたらどれくらいの額がよいかを決めることになります。

シンプルで習得しやすい概念でベットする・しないの判断の精度があがる即効性もあるので、ご存じない方は、ぜひ最後までご覧ください。

前提

前提として簡単にコンボの説明をします。

テキサスホールデムのスターティングハンドには、1,326通りの組合せがあります。

ペア 6×13=78 

スーティッドハンド 4×(12+11+・・・+1)=312 

オフスートハンド 12×(12+11+・・・+1)=936 

因みにスートを無視すると、例えばAK♥♦とAK♠♣などを同じハンドとすると、ハンドの種類の数は169になります。

これを前提にして、実際のコンビナトリクスの話に移ります。

コンビナトリクスの概要

ボタンが40%のレンジでオープンレイズした場合、522コンボのハンドがレンジの中にあります。 

ペアが78コンボ レンジに占める割合は14.9%

スーティッドが180コンボ 34.5%

オフスートが264コンボ 50.6%

次に、BBがボタンのオープンレイズに3ベットするレンジを10.71%=142コンボとすると、

ペアが66+で54コンボ(38.03%)

スーティッドがAXs、KJs+、QJs+、JTsで64コンボ(45.07%)

オフスートはAK、KQの24コンボ(16.9%)

となります。

ボタンがBBの3ベットに対して、TT+、AKしか対抗しないとすると、

30+16=46コンボ8.8%しかプレイを継続しないこととなり、

どんなハンドでも3ベットすれば利益的となるため、降りすぎとなる。

コール270コンボ=51.7%、4ベット24コンボ4.6%とすると、

バランスの取れたディフェンスレンジとなります。

BBのコールレンジを258コンボ=19.46%とすると

AXのコンボは、56コンボ 21.7%

一方でボタンのレイズレンジには、AXは144+48+6=198コンボ 37.9% 

Aがフロップに1枚落ちた場合、

ボタンのレンジには、198-12*3-12*1-3=147コンボ (28.2%)

BBのレンジには、 56-4*3-2=42コンボ (16.2%)

このようにボタン側のレンジにはAヒット又はAセットを持っているコンボが非常にたくさんあります。これがAが落ちたフロップがレイズ側に有利と言われる所以です。

ここから、コンビナトリクスをどうやってバリューベットをするかしないかの意思決定に使うか、フロップを例に見てみましょう。

実戦で厳密にコンボ数を数えることは不可能ですが、おおまかであっても、自分がベットするときに、それがバリューベットなのかブラフなのか、バリューベットならどのようなコンボに向けて打っているのか、ブラフならどのようなコンボに向けてブラフしているのか、常に意識するとベットの判断の精度がかなり増すと思います。

すべてのシチュエーションで、こちらがBTNでAKhdを持っていて、3bbのオープンレイズ、BBが先ほどあげた19.5%(258コンボ)のレンジ※でコールしたものとします。

*99、55-22、A9s、A2s、KT-2s、QT-6s、J8s-T7s、J9s-53s、98s-54s、AJ-A8o、 KJo、KTo、QJo、QTo、JTo

フロップ例1 

こちらのハンドに勝っている相手のコンボは、
・44のセット(4sのない4ペアで3コンボ)
・AToのツーペア(Ah、Ac、TdのないATで5コンボ)
の8コンボのみで、ボタンにかなり有利なフロップです。

バリューベットをしてコールしてもらいたい相手のレンジである「バリューターゲット」についても、

・A9s(2コンボ)

・A2s(2コンボ)

・AJ(6コンボ)

・A9(6コンボ)

・A8(6コンボ)

・KT(7コンボ)

・QT(9コンボ)

・JT(9コンボ)

などAとKを1枚ずつブロックしている分を引いて47コンボです。

また、相手のレンジの大半の143コンボが何もできておらず、

・4ヒット(8コンボ)

・55、33、22(18コンボ)

も入れると169コンボがこちらのベットにコールできず、

ドローもないので、ブラフも多用できます。

ナッツ・セカンドナッツのAA、TTが相手にはないので、こちらに「ナッツアドバンテージ」があり、その点からも強いブラフもできる場面です。

よって広いレンジで少額のCBetが打てる場面ですね。

フロップ例2 

こちらのハンドに勝っているハンドが大半なので、ブラフコンボを探ることになります。

Qヒット、6ヒットは降ろすことは不可能で、ペアも無理でしょう。

ただそれ以外のハンド172-28=144コンボ、55.8%は、これはAとKのブロック分を引いたものですが、何のドローもないので、降ろせる可能性が高いです。

ナッツアドバンテージはやや薄れますが、66とQQはこちらのレンジにあり、Nothing率があがり、一方でバリューターゲットは全くないので、完全なブラフのCBetが打てる場面です。

相手のレンジはめちゃめちゃ強いハンドかどんなベットにもコールできないめちゃめちゃ弱いハンドに2極化している状況、いわゆるポーラライズしている状況なので、CBetの額も小さくて問題ないです。

利益を最大化する大きなバリューベットを打つ必要はないですし、大きなブラフベットなら降りるけど小さなベットならコールするようなマージナルなハンドもありませんので。

フロップ例3 

このフロップもバリューターゲットはありません。

先ほどのフロップと違って、相手のレンジにマッチしているコンボが多くあります。

・セットが5と3で6コンボ

・2ペアが2コンボ

・Jヒットが38コンボ(AhとKdのコンボを引く)

また、オープンエンドストレートドローが4コンボで、

最低でもコールはされるコンボが50コンボ=19.4%あります。

また5ヒットが12コンボ、4ペアが6コンボ、ガットショットストドロ&フラドロが6コンボ、バックドアフラドロストドロが15コンボの計39コンボあって、

仮にこの半分にコールされるとすると、69.5コンボ=26.9%はコールされることになります。

これに加えて、ボードテクスチャからこちらに不利なフロップだと分かっている相手からチェックレイズブラフをされる可能性も考えると、チェックバックがより妥当なフロップと言えます。

フロップ例4 

これで最後の例になります。

こちらもマッチしていないですが、相手もマッチしていないフロップです。

実際にはマッチしていないんですが、相手から見たこちらのレンジだと、

7セット、オーバーペア、AXss、KXssといったマッチしているコンボが多いので、

ブラフも効きます。

相手のレンジには、

・セット(6コンボ)

・99(6コンボ)

・7ヒット(3コンボ)

・フラッシュドロー(23コンボ)

で38コンボ(14.7%)しかコールできるハンドがありません。

よってこのフロップも広いレンジで安いCBetを打つことが妥当となります。

まとめ

コンビナトリクスを使ったベットするかしないか、するとしたら大きいベットか小さいベットかについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?

長くなってしまったので、フロップの場面に限って説明しましたが、

ターン、リバー、特にリバーでのベットでも同様の思考方法が非常に役に立ちます。

一点注意しておくと、コンビナトリクスは、プレイ中に実際にコンボ数を全部考えて、%を出してオッズと比較してどうするというものではなく、

ざっくりと想定して、自分のハンドの相対的な強さをはかる手がかり・洞察を得るために使うのが最も有効な方法だと思います。

なんとなくでしていたベットやチェックを一歩先に進めるために、自分でもかなり即効性があった概念なので、ぜひこのエントリを何回も読んで習得してください。

コメント